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March 07, 2013

優しさと誠実さについて~ 映画:「アルバート氏の人生」

合コンや婚活などのお見合い的なシーンにおいて、ルックスには全然自信がなくても、優しさと誠実さだけは自信を持っている旨をアピールする人がいる。でも、好きだ必要だと思って関心を持っている相手に対して優しく誠実に振舞うのはあたりまえのことで、好きな人を傷つけるようなことばかりしてしまうのは小学生レベルの人だけだ。
そうではなくて、本当の優しさや誠実さというのは、自分の人生において用済みになった相手をどう扱うかで、はかるべきなのではないのかなと思う。いろんな形の優しさや誠実さがある。自分の心に正直に、関心のなくなった相手には一切情けをかけないのもある意味で誠実といえるし、優しい嘘を吐きつづけながら、少しづつフェードアウトをするのも優しさだ。でも、どっちも、なんだか、違うように思う。
本当に優しくて誠実な人は、一度深く関わった相手を決して自分から用済みにしない、というかできない。
だからむしろ、関わる相手を慎重に選ぶし、安易に愛を誓ったりしない。そういうことなんだと思うんだよね。
私は、特に優しくも誠実でもなくてどっちかっていうと調子に乗りやすい軽薄な人間であるけれど、本当に優しくて誠実な友人には恵まれているほうだと思う。人間関係に持ちつ持たれつの見返りを求めるタイプの人は八方美人で飽きっぽい私をいつか見限る。そうすると結局は、私のあるがままの人間性を面白いと感じてくれ、誠実で優しい人だけが残るのである。「来るもの拒まず去るもの追わず」というのは、怠け者にとって最高の仕組みである。
心優しい友たちにとっては罠にはまったようなもので、傍迷惑な話であるが、長いことずっと私を見捨てないでいてくれる友ほど大事にしているかというと実は全くそんなことはなかったりして、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。誠実で優しい彼らは多少邪険で失敬な扱いをしても笑って許したり、説教つきで許したりしてくれるので、つい甘えてしまうのだ。
その点では「優しくて誠実」というのは、調子のいい人間に利用されるだけで本人の利益には全然ならない不毛な性質のようにみえるが、囚人のゲーム、ではないけれど、結局は相手を信用して、優しく誠実にふるまったほうが、長い目で人生を考えると、お互いに幸せな思いをし、得をすることが多い(確率が高まる)のは確かではある。
ただ、真面目に誠実に人に尽くしていればいつか必ず報われるかっていうと全くもってそうではないことを私たちは身をもって知っている。そうなのだ、世界というのは本質的に不条理で不公平で、全くフェアとはいいがたい矛盾に満ち満ちたものだから。
やりたい放題に他人を足蹴にしつつ身勝手な人生を送っても、孤独どころか何故か皆に愛されかまわれて、賑やかで穏やかな老後を何不自由なく心満ち足りて送る人だって実はいっぱいいるというこの容赦ない現実よ。
「アルバート氏の人生」は、この上なく誠実で実直な、とある人生の物語。
アルバート氏の人生が結局のところ不幸であったのか幸福であったのか。それはわからない。
でも、アルバート氏の幸福を手に汗握って願わない観客はいないだろう。
ああ無情、としかいいようのない事態がアルバート氏を襲うたび。
幸福な夢や楽しい時間に子供のように瞳を輝かせるとき。
でも僕らがどんなに祈っても、観客はもちろん、劇中の誰もアルバート氏をその運命から救えない。
不条理で不公平で、全くフェアとはいいがたい矛盾に満ちた世界はそれでも美しいし、アルバート氏は夢を見る。
中盤からラストは、もう本当に泣けてしょうがなかった。
全てのキャストがいちいち個性的、魅力的で素晴らしく、19世紀アイルランドの風俗や自然を凝った美術と端正なカメラワークで写した映像も大層美しく、リアルなのにファンタジックで文句なし。シネフィルから普段テレビ放映でしか映画を観ない方まで、自信を持って老若男女どなたにもお勧めできる本当に素敵な映画です。
ってもう公開は終わっているけれどな。
DVDが発売されたら是非、お手に取ってみてね。
むしろ映画館でぼろぼろ泣いちゃうとちょっと恥ずかしいので、家でゆっくり観た方がいいかもしれません。
「アルバート氏の人生」 日本語公式ページ

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