『恋の渦』 ポツドール

本日初日。いやはや、今回は、物議をかもすようなショッキングな演出はなかったものの、期待にはしっかり応えてくれたと思う。好評だった番外公演『女のみち』をきちんと血肉にしている感じ。三浦氏やはり侮れず。今回、どんな内容なのか、一切前情報なしに観ることができたのをラッキーに感じたので、ネタバレは頁を改める。

ただ、前回公演がアレだったので、「ポツドール、面白いのかもしれないけど、エログロなんでしょ？　男の裸とか別に見たくないしなあ…」というので二の足を踏んでいる方には今回は是非足を運んでみて欲しいとだけ。今ならまだ、劇団ホームページより残席予約できます。

12月10日（日）まで、新宿THEATERTOPSにて。

以下ネタバレ有り。

まず、私の大好きな、作りこみ舞台装置、今回は大盤振る舞い。クレジット前の導入部では、シンプルなワンルームのパーティシーンでひと騒動。今回は地味だな、と思ったら、暗転後、パーティに参加していたメンバーの自宅4部屋が、「裏窓」状態で覗けるセット。それぞれ、そのまま普通に暮らせそうなリアル装置。同時進行を強調する４つのテレビ画面。素晴らしすぎ。それだけでもう嬉しくなってしまうが、その素晴らしい装置をフル活用してドラマは進行する。

男女それぞれのキャラクターたちまくり。街で見かけるバービー人形みたいな髪をしてマスカラを厚く塗った華奢なあゆ風の女の子たち、ちょっと不良で軽そうな男の子たちの恋愛模様。

空気を読むだけしか能がないくせに威張り散らす男、空気すら読めず、さえないくせに見栄だけは一人前の男、詰め寄られて悪くもないのに素直に謝ったり、つけいられてばかりかと思いきや鮮やかに裏切る女、丁々発止。さっきまで会ってたのに、携帯で内緒話。携帯はとにかく、全編で鳴り捲り。水面下で進行する裏コミュニケーション、本音、とにかくテーブルの下での足の蹴り合いもいちゃつきも、全部見せます、の多重同時進行劇。女の子達のしたたかさ、世代を超えて身につまされるカップルの会話、息もつかせぬ面白さ。

最後のオチも相変わらず救いはないが、爽快。別に「役者」が観たいわけじゃない、「ドラマ」が観たい、そして舞台でしか観られないパノラマを。という期待にガッチリと応えてくれる。そしてもちろん、初日にしてこの完成度。プチ評論家と化した客に甘えるような舞台はもういい。こういうプロの仕事だけが観たい。